あんずにまつわる中国の伝承
日本にはあまり杏の神話や伝承は残っていませんが、杏発祥の地である中国にはいくつか面白いお話が残っています。今回はそんなお話の中からひとつ、医者にまつわる杏のお話をご紹介いたします。
『神仙伝』の故事
その昔、中国に董奉(トウホウ)という仙人がおりました。
仙人は、病気になった人たちを無償で治療していきます。
人々はそんな仙人の行いに感謝し、お礼をしようとするのですが、仙人は感謝の品々を決して受け取りません。
そして、言うのです。
「礼の代わりに我が家の周りにアンズの種を植えて欲しい」と。
それは病気の程度によって変わりました。
重病が治ると5粒、軽い病気が治ると1粒といった具合です。
人々は病気が治るたびに植えていきました。
時が経ち、董奉の家は立派な杏の木で囲われるようになります。
董奉は、そこで実る杏を穀物と交換し、貧しい人々に振舞いました。
これは中国の『神仙伝』に伝わるお話です。
このお話から、良医を表す「杏林(シンリン)」という言葉が生まれました。
日本では「キョウリン」と言われることが多く、医療系の大学や製薬会社、薬局の名前として聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
名前には様々な意味が込められるため一概には言えませんが、きっとこのお話を元に付けられたところもあるでしょう。
どこかで「杏林」を見つけた時は、ぜひこのお話を思い出してみてくださいね。